嫌いな男 嫌いな女


部屋に戻ってきてカーテンを開けた。

仕方ないとはいえ、なんで俺が美咲を呼びださなきゃいけねえんだ。
窓を眺めながら考える。

……でも渚と約束しちゃったし、仕方ねえか。

美咲の部屋は明かりが付いている。ってことはもう帰ってきているんだろう。

はあっとため息を落として、隣にある紙袋を見つめる。
なんて言って渡せば……いいんだか。

いつまでも美咲の部屋を眺めているのも気持ち悪いな俺。

ぐいっとポケットに突っ込んでから、よし、と気合を入れる。


ああもう。どうしてこうも緊張するのかたかが隣の女に話しかけるだけなのに。なんだか腹たってきた。

窓をまたいで、屋根に乗る。
そのまま美咲の部屋の方に移動して、コンコン、と窓を叩いた。


「美咲?」


少し時間が空いて、ためらいがちに、少しだけ窓が開いた。
窓を開けない可能性も考えていたから、取り敢えず第一段階クリアだ。


「なに?」


ただ、窓は開いたけれど、美咲の姿が見えない。
ちょっと腰を上げて覗きこむと、美咲が壁にもたれて座り込んでいた。

……なにしてんだ、こいつ。


「おいもう少し開けろよ」


じゃないとお前が見えないだろ。渡せねーだろ。


「いや」


なんでだよ。
開けたんだら顔くらい見せろよ。なにすねてんだこいつ。


「……なんの用?」


腹立ってきた。
なんで顔を見せないんだこいつ。なんで顔を見ずに話をしなきゃいけねーんだ。
わざわざ来てやったっていうのに。

座りながら片手だけ上げて、窓がこれ以上開かないように押さえあがって。
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