また桜が咲いたら
少女と砂場で砂山を作る。
横から掘った土を持ってきては山に塗り重ねる。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、少女はその小さな手で砂を掘っては重ねる。
時折、ベンチに座っている母親に目配せしてニコニコしている。
母親も少女に向かっておどけた表情をしたり、手を振ったりしている。

「…しーちゃんはママが好き?」

「うん!だいすき!ひーちゃんもパパもすきだよ」

「ひーちゃんって??」

「しーちゃんのおねぇちゃん」

おねぇちゃん…か…

「そっか」

「おねぇちゃんのおなまえは?」

「私は桜香だよ」

「じゃあ…おーちゃんだね!」

「…おーちゃん…そうだね。おーちゃんだね」

「しーちゃん、おーちゃんもすきだよ」

突然の少女の言葉に、涙が…流れる。

「おーちゃん、ないてるの?いたいの?」

「…そうだよ。おーちゃん、嬉しくて…胸が痛いんだよ」

心配そうな顔をする少女。今にも泣きそうな表情をしている。

「だれのせい?おーちゃん、よしよし」

少女は私の頭を撫でる。

「…ごめんねぇ…おねーちゃん…ごめんね…」

「ちょっとまっててね」

少女は母親の方にかけていく。
そして何かを貰うとまた走って戻ってくる。
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