わがままモデル王子は甘い香り
おいっ!
今まで紫音が長身だったのに気付かなかったのかよ

どんだけ鈍感なんだよ、あいつは

「よくまあ、海堂彰吾と会話が続くねえ
私なんかこいつの言語を理解するのに時間がかかったよ」

紫音が肩をすくめた

「意味のねえ言葉をだらだら話すヤツより、話やすいぞ」

俺が答えると、紫音がため息をついた

「仲好しこよしなことだ」

紫音は俺らに背を向けると、撮影現場へと足を踏み出す

俺も足を動かした

「おめでとう」

「サンキュ
出産祝いは豪華なものにしろよ」

「服」

「ぜひ高級なスポーツユニフォームで!」

海堂の会社はスポーツ関係のユニフォームやジャージ、シューズを販売している会社だったからな

「いや…一之瀬ブランド」

「いらねえよ!
姉貴にもらえるだろうが」

海堂がにやりと笑う

冗談のつもりだろう
あいつは滅多に冗談はいわないがたまに言うんだよな

気付かれずに流されるのが多いけど
あいつなりに人間関係を温かくしようとしているようだ

紫音と海堂の会話で、休憩が終了した
本を読む暇もなく、撮影が開始される

俺は結局、家に帰るまで紙袋の中身を確認することさえ出来なかった
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