わがままモデル王子は甘い香り
『え?……でもぉ』

風呂から出てくると、莉緒の気まづそうな声が聞こえてきた

俺は濡れている髪を、タオルで拭きながら居間に行くと、莉緒の姿を探す

莉緒はキッチンに立って、携帯を握っていた

夕食のあと片づけ中に、誰かから電話がかかってきたのだろう

俺は莉緒を横眼で確認してから、ソファに座った

「う~ん、そう言われても、私一人で決められることじゃないし」

言いにくそうに莉緒が言葉を選んでいる

俺は振り返ると、莉緒と目を合わせようとした

「聞くって言われても」

「莉緒? 誰?」

電話している最中に話しかけるべきではないだろうが

莉緒の困っている姿はあまり見たくない

「ごめん、ちょっと待っててくれる?」

莉緒は電話の相手に告げると、俺に困った顔を向けた

「春ちゃんからなんだけど、コンパがしたいって」

主婦にコンパを頼むなよ!

…って俺が目当てなのはわかっているけど

俺が呼ぶであろうモデル仲間が目当てって言うべきか

「俺が男メンバーを集めればいいの?」

「えっ? なんでわかるの?」

「わかるだろっ、普通」

「…桜嗣、嫌いでしょ? そういうの…」

ああ。
嫌いだね

大嫌いだよ

でもね、俺の気持ちを優先して莉緒を困らせるのはもっと嫌なんだ

「いいよ、何人集めればいい?
それと春って子のあいている日の予定をいくつか聞いておいて
俺の予定もあるから」

「え?……あ、うん」

莉緒が驚いた顔して、うなづくと春ってヤツと電話で話始めた
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