わがままモデル王子は甘い香り
「私、桜嗣が春ちゃんを無理やり犯したなんて思えない」

は?
何の話だ?

俺は眉に力が入る

この女はまたおかしなことを莉緒に吹き込んだのかよ!

「桜嗣はそんなことしない
どうして春ちゃんは変なことを言うの?
この前だって、まるで浮気してるみたいな言い方して」

莉緒がベッドの中で、春に言った

真剣な表情の中に、悲しいオーラが見えた

友人だと思っていたヤツが友人ではなく、敵だとわかった心境とはどういうものなのだろうか

己を貶める人物だとわかったとき、莉緒は相手にたいして憎しみを抱くのか?

俺は春が抱く、莉緒への憎しみを前に聞いた

じゃあ、莉緒は春をどう思っているんだ?

「はあ、つまんないの
だから莉緒は嫌いなのよ
どうしてこんな女がいいわけ?
どこにでもいる普通の女よ

なのにいつも私の前を歩くのよ
いつも私の男を奪うのよ

知らない顔して、大人しい顔をして
いつも男の視線を奪う」

「え? 何の話し?」

莉緒は眉間にしわをよせると、不思議そうな顔をした

莉緒も知らないのか

勝手にこいつが思いこんだ被害妄想か?

「高校2年のときよ!
覚えてないの?」

「覚えてないって言われても
だって私、高校のとき誰とも付き合ってないし
奪うなんて……」

「ふうん」

春が髪を掻き上げた

すごくつまらなそうに…春が莉緒を見た

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