Mr.キューピッド
今まで公園に1人で来ることなんてなかった。
いつも隣には佑音がいて、一緒にブランコとか乗って……楽しかったな。
(懐かしいな……)
ブランコの近くに寄って、座ろうと鎖を掴もうとする。
けれど……
「……だよね。」
体は透けてるワケだから、掴むことなんて出来なかった。
少しだけ寂しくなって、目頭が熱くなって……涙が流れてきた。
情けないな。死んだ途端泣き虫になっちゃったよ……。
「おお?どうしたんだ坊主。」
「ん……?」
涙を服の裾(白装束)でゴシゴシと拭いていたら、後ろから誰かに声を掛けられた。
「誰?」
泣いてるところをみられるとか最悪なんだけど……。
俺は振り返って声を掛けてきた人を見る。
(……何この人、)
後ろにいたのはサイズが合っていないだぼだぼなスーツを着た男の人だった。
無精髭に癖のある髪で……失礼だけど不清潔に見える。
「って、」
何でこの人、幽霊の俺に話し掛けてくるの!?
ビックリして思わず後退る俺。
「な、何で俺の見えてるんですか……?」
この人あれかな?霊能力者とかそういう類いの……。
男の人は俺の驚き様を見て、声を出してニカッと笑う。
「何だ何だ!ってことは坊主、お前は死んだことに気付いて今ここにいるのか!」
「は、はぁ?」
「成程なぁ……だから俺に話し掛けられて驚いた訳か……っ!」
何が可笑しいのか全く分からないけれど、男の人は俺のことを見てクスクスと笑う。