Mr.キューピッド
「……ナナトだったよな?」
「え?うん……」
名前を尋ねられて、俺は首を縦に振る。
ナナトって名前……漢字だと女っぽいけど普通に口にすると男な名前なんだよね。
佑音は逆に漢字が男っぽいけれど。
男の人は俺の頭に手を伸ばすと、頭に付いていた三角を取り外してポイッと地面へ投げ捨てた。
「名前が言えたとなると……お前は『俺側』の人間ってことになるな。」
「は?」
『俺側』って何?
「とりあえず上に報告しねぇと……ナナト、」
男の人は俺の名前をめんどくさそうに言うと、よっこいせとかいう親父臭い掛け声を掛けて、俺の体を……
(か……担がれた!?)
軽々と肩へと担ぎ上げたのだった。
「凄……じゃなくて!何するの!?」
思わず感動するところだった!
俺は男の人の背中をバシバシと叩きながら尋ねる。
男の人は楽しそうに笑いながら、俺の頭をゴシゴシと撫で回す。
「お前らが言う『天国』に行くぞ。」
「て、天国!?」
「よーし、行くぞナナト。しっかり俺に掴まれよ?」
「ちょっ……!」
『天国に行く』とか言われて普通落ち着いていられる訳がない。
せめて今の現状を整理したいけれど……、
「うわぁぁぁあ!!」
心の準備がまだ出来ていない俺を担いでいる男の人は、甲高い声で笑いながら、俺と一緒に星が瞬く静かな空へと思いっきりジャンプをした。
(この人って一体……)
『何者なの?』
そう考える前に、段々と小さくなっていく生まれ育った街が目に入って……
あまりの高さに驚いて気絶をしてしまったという。
果たして俺は、これから一体どうなるのだろうか……。