Mr.キューピッド

「……ナナトだったよな?」
「え?うん……」

名前を尋ねられて、俺は首を縦に振る。
ナナトって名前……漢字だと女っぽいけど普通に口にすると男な名前なんだよね。
佑音は逆に漢字が男っぽいけれど。
男の人は俺の頭に手を伸ばすと、頭に付いていた三角を取り外してポイッと地面へ投げ捨てた。

「名前が言えたとなると……お前は『俺側』の人間ってことになるな。」
「は?」

『俺側』って何?

「とりあえず上に報告しねぇと……ナナト、」

男の人は俺の名前をめんどくさそうに言うと、よっこいせとかいう親父臭い掛け声を掛けて、俺の体を……

(か……担がれた!?)

軽々と肩へと担ぎ上げたのだった。

「凄……じゃなくて!何するの!?」

思わず感動するところだった!
俺は男の人の背中をバシバシと叩きながら尋ねる。
男の人は楽しそうに笑いながら、俺の頭をゴシゴシと撫で回す。

「お前らが言う『天国』に行くぞ。」
「て、天国!?」
「よーし、行くぞナナト。しっかり俺に掴まれよ?」
「ちょっ……!」

『天国に行く』とか言われて普通落ち着いていられる訳がない。
せめて今の現状を整理したいけれど……、

「うわぁぁぁあ!!」

心の準備がまだ出来ていない俺を担いでいる男の人は、甲高い声で笑いながら、俺と一緒に星が瞬く静かな空へと思いっきりジャンプをした。

(この人って一体……)

『何者なの?』
そう考える前に、段々と小さくなっていく生まれ育った街が目に入って……
あまりの高さに驚いて気絶をしてしまったという。


果たして俺は、これから一体どうなるのだろうか……。




< 13 / 40 >

この作品をシェア

pagetop