Mr.キューピッド
死んだ人の魂っていうのは、生まれ変わって新たな人生を歩める人と、死後の世界で新たな人生を歩む人とで分けることが出来るらしい。
生まれ変われる人っていうのは大体が生前を全うして生きられた人。与えられた寿命で死んだ人だ。
そして死後の世界で生きられる人っていうのは病気や事故によって死んだ人。つまり、俺みたいな人。
だけど自殺した人の魂だけは消えてしまうんだとか。『途中で与えた命を投げ出したのだから当然だ』と滝本さんは言っていた。
因みに死んだショックで記憶が欠けていたりすると、消える魂の対象にされるらしい。
「お前そろそろ俺との研修期間終わるな。」
「ああ、そうでしたっけ?」
「しっかりしろよなぁ……」
「ハハっ、」
何で俺は『キューピッド』になったのかと言うと、それは俺の隣にいる滝本さんのせいだったりする。
死後の人生を歩む時、人間で言う天国へやって来た際に『人の為になる仕事』を与えられるのだけれど……普通なら『キューピッド』、『死神』、そして『監視役』の3種類から選べるらしい。
『死神』は人の死を管理する職業。主に生まれ変われる魂を迎えに行く仕事だ。
『監視役』っていうのは人1人に与えられる1つの人生……というより生きざまを『物語』として記録をする仕事だ。生きた記録を本にして残し、魂を査定する際の資料として死神へ回すらしい。
そして俺がやっている『キューピッド』っていうのは……人と人とをくっつけて愛し合わさせる仕事。『『出逢い』を与えて可能性を作り出す』って滝本さんは言い換えていたけれど。
『愛し合わさせる』だなんて痒くて言えないんだって。