Mr.キューピッド


「お、あの男みたいだぞナナト!」

赤い糸をひたすら辿って10分後、ついに吉田さんの運命の相手を発見することが出来た。
一応赤い糸を引っ張って確認をすると、確かに相手の左手の小指には、吉田さんとの繋がりが絡まっている。
吉田さんとくっつくのはこの病院の売店のお兄さんで間違いないらしい。
俺は胸ポケットに入れているルーペを取り出すと、それを男の人へとかざす。
すると、ルーペの中に男の人の情報がくっきりと浮き上がってきた。

「相手の名前は『畑村達也』。22歳の独身で、現在バイトをしながら就職活動中。」
「ほほぉー、ってことは経済的に余裕が出てきたらプロポーズなタイプだわな。」

ルーペに出てきた文字を見ながら、滝本さんが言った。
因みにこのルーペはキューピッドや死神、監視役の方々も持っていて、この世界でいう図鑑的なものなんだ。
実は好きな食べ物とかどうでも良いことも書かれてたりする。
この前滝本さんにルーペを向けて好きな食べ物を見てみたら、『ソフトクリーム』とか出てきて……意外とチャーミングなおっさんだったことを知った。

「いや、最近はフリーターでも結婚しちゃったりするので、意外と就職する前にプロポーズするかも……?」
「いやいや、あの人相は明らかに俺の思うタイプだぞ?」
「………まぁ、見えなくもないですけど。」

男の人……畑村さんは、明らかに『真面目な人』っていう顔。
メガネに七三分けで、そしてハキハキと言葉を発する……失礼は承知だけれど、まるでロボットを思い起こさせる。
ちょっと口煩そう……。

「さてと、じゃあ一旦女の方に戻るか。」

滝本さんは回れ右をすると、元来た廊下を歩き始める。
俺もルーペを胸ポケットへ戻してから、滝本さんの後ろを追い掛けて吉田さんの病室へと向かった。


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