Mr.キューピッド
「ハラハラしたぁ……」
吉田さんってば無茶ばかりするんだもん。俺の『シナリオ』のせいで怪我を酷くしちゃったらどうしようってかなり心配した。
「良くやったなナナト!」
一緒に吉田さんと畑村さんを見守っていた滝本さんは、俺の頭をゴシゴシと撫で回しながら、俺の仕事の手柄を褒める。
「流石に自分を助けてくれたヒーローを『運命』って思わない人はいないもんな。グッジョブたぜ。」
「あ、ありがとうございます……」
褒められて嬉しいと思わない人もいない訳で。俺は滝本さんに認められていることが嬉しくて、段々と肩に入れていた力が抜けていった。
吉田さんと畑村さんの左の小指を見てみると……確かに結ばれた証の鎖が繋がれていた。
俺だってやれば出来るんだ……。
「さてと、」
滝本さんは俺を撫でる手を止めると、ダボダボなズボンのポケットからカメラを取り出して、吉田さんと畑村さんの小指を撮影する。
「これと一緒に報告書をまとめたら今日の仕事は終わりだ。」
「はい。」
「よしっ、じゃあ帰るぞ!」
そう言うと、滝本さんは回れ右をして、外へと繋がる壁を抜けていった。
俺もそれに続こうと壁に手を掛ける。
けれど、その前に俺が出逢いを与えた2人を最後に見ようと思って、盗み見るように横目で後ろを見た。
2人は笑い合いながら、幸せそうに言葉を交わしていて、
そんな光景を見ただけで俺まで幸せな気分になれたんだ。
自分の為ではなくて
誰かの今の、その先にある幸せの為に
俺達キューピッドは手伝いをするんだ