Mr.キューピッド


『――――……!』
『――――、』
(………ん、)

遠くの方から声がした。
泣き声とか怒鳴り声とか、いろんな声がおり混ざって騒音のように耳に響く。

(ここはどこ?)

体を動かそうと力を入れる。けれどピクリとも動かない。
目を開けようとしても、やっぱり動いてなんてくれない。
声を出そうとして口を開こうとしたけれど、やっぱり動いてなんてくれなかった。

(どうなってるんだ?)

というか、俺は一体どうしちゃったんだ?
確か佑音を庇って看板の下敷きになって、痛みとか全く感じないまま気絶したんだよね?
俺の下に倒れた佑音は今どうなってるのかな?いやいや、佑音は無事だよ多分。俺の中の何かがそう言ってるし……。
佑音はともかく俺は?俺は一体どうなっちゃってるの?

(おーい!誰かー!)

心の中でそう叫んでみる。
意外と冷静そうに見えるかもしれないけれど、内心はもの凄く不安でいっぱいだ。
自分が生きてるのか死んでるのか分からない挙げ句、体が全く動かない……生きてる心地とか全くないから、不安で胸が押し潰されそうになる。
俺は一体どうなったのか……誰かに聞かないと分からないこと。

(せめて……)

この耳に入ってくる騒音が、ちゃんと言葉になってくれたらいいのに。
そんなことを思いながら、耳を澄ませてみた。


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