Mr.キューピッド

霊柩車と言えば最後に見たのはじいちゃんの葬式の時だった。
『綺麗で大きな車』。小さかった俺は指で差しながら父さんに言って、ポカンと頭を殴られたっけ。
懐かしいなぁ……………………………………………………………………って、

(ちょっと待って……)

霊柩車?葬式?
単調な言葉とか誰かの泣く声とか……

(確率的に考えると……)

これはもしや……
俺はそれなりに動くようになった体を、力を入れて無理矢理起こす。
熱がある時みたいに少しふらつくけれど、そんなこと構うものか。
起き上がった体を座らせて、ゆっくりと無理矢理閉じていた瞼をこじ開けて、辺りを見渡す。

(……うわ、)

何か……見ちゃいけない光景を見ている気分になるくらい、凄い場所に俺はいた。
白いカーテンに素朴な中……そして今更気付いたのだけれど、蓋をされていた筈の俺は、何故か起き上がっていて、下を向いて確認したらあらビックリ!

「透けてるよ!!」

驚きすぎて今まで出て来てくれなかった声がお腹から出てきてくれた。
しかも俺の下にあるの棺だし。

(ってことは……)

俺は……

「死んだのか……」

佑音を庇って、死んだんだ?
じゃあ今まで俺が聞いていた声や音は、全部俺の葬式のものだったのか……

「……はは、」

今起きてるこの状況があまりにも理解出来なくて、笑いが込み上げてきた。

「何なのこれは……っ!」

ついでに情けない量の涙も。


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