愛しのツンデレラ


「あいつ、好きな人いるんだよ。」


相手は後輩ではなく

奴のクラスメート


どこからともなく


聞いた話でした。


なんとなく


悟ってはいましたが




―「…知ってたの?」


私が知ったからって


動揺もしない


いつもの姫。


「まぁ…。」


「…。」


どうでも良さそうに

答える姫に

少しだけ傷ついて


黙り込んで


考えて


それでも訊けたのは

たった一つ。


「じゃあ、

バレンタインあげろって

言った時、

すでに知ってたの?」



「うん。」



一瞬、理性が途切れて





叶わない恋をしろと?!

自分、

告られたことしかないから

わかんないだろ!!

いつだってそう。

他の人には

気を使ったりするのに

姫はあたしの事なんか

何も考えてないんだ。



言葉を飲み込む。

理性を取り戻して

泣きたくなる気持ちも殺して


傷口は開いたままで

私はその日、

泣きもしませんが


笑いもしませんでした。




***
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