題名のない怖い話
赤いランドセル
「ママとパパってチーズ好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃぁ侑ちゃんものせる!」
テーブルには夫、淳平が作ったコーヒーと
愛娘の侑のためのチーズをのせた食パンとココア、
そして私、恭子のパンが並べてある。
加藤家の朝はいつも和やかである。
侑は食べ物を口につめこんで、口のまわりにチーズをつけた。
それを私はティッシュでふいてあげる。
その時、侑はココアを半分だけ飲んで椅子から立ちあがった。
そして急ぐようにリビングから、2階の部屋まで走り去った。
ドッ ドッ ドッ ドッ
階段を登る音がリビングに響く。
「侑~?どこへ行くの?ココアをちゃんと飲むのよっ」
「侑?何しに行ったんだい?」
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
すぐに階段を勢いよく侑が下りてきた。
ちょっと息を切らした侑が聞いた。
「ママ!侑ちゃん、赤色似合う!?」
ユウの背中には新品で
ピカピカの
赤いランドセルが背負われていた。
侑はいきいきした笑顔で笑っている。