題名のない怖い話
「あれ?侑はどこに行ったんだ?」
淳平は驚いてあちこちを探す。
その光景を見て私、恭子は落ち着き払った声で言う。
「遊びに行ったのよ。」
「今から入学式なのにか?」
「すぐに戻るように行っておいたのよ」
侑は、いつも遊びに行くとき、
「ちょっと行ってくる」という。
そう言うといつも必ずすぐに戻ってくるから
心配なんかはあまりしていなかった。
「淳平パパ…もう侑も小学生ねぇ」
「あぁ、この前まで赤ちゃんだったのにな!」
「これから先が楽しみねぇ」
もうそろそろ5分が経過する。
しかし、なかなか侑は戻って来ない。
「遅いな…」
チッ チッ チッ チッ
部屋には時計の音が響く。
チッ チッ チッ・・‥
遅い…
遅すぎる…
もう小学校の入学式に行かなきゃいけないのに…
侑はなかなか戻らない。
時計の音が、私の心を不安にさせた。
侑!!!!
その時、沈黙を破るように淳平が口を開いた。
「探しにいくぞ!遅すぎるから」
「あ…ええ!」