ドラゴン・テイル【外伝】
結局、行くなら早い方が良いと言う意見で一致し、その日の内に出発することに。
「はぁー、ラーマに乗るの、久しぶりね!
やっぱ気持ち良いわー」
ラーマの背で吹き抜ける風を気持ち良さそう受けながらキスティンが呟く。
記憶の泉はグレイクレイの横を流れる川に沿って西に進んだ所、港街アリルアとのちょうど中間に位置する場所にあり、そこには深い森と入り組んだ洞窟が大きな口を開けていた。
森の深さも手伝ってか、洞窟の中はその入り口に立っても目の前の様子すら分からない程に暗い。
ラーマが小さく指を鳴らすと、その指先にポゥッと音を立てて光が灯る。
パチ………ィン……
僅かな音さえも余韻を残して響くその洞窟には、異様としか言えない雰囲気が満ち溢れていた。
先頭で入っていったのはヴァルザック。
次にウル、レナ、キスティンと続き、最後尾にラーマが入ってきた。
ヴァルザックは、ラーマ同様指先に光を灯し、後ろの様子を気遣いながら歩を進めていく。
洞窟の中は湿気が高く、蒸し暑い。
腐葉土のような、少しカビ臭いような、独特の匂いと石壁に包まれる圧迫感から、誰一人口を開く者はいなかった。
無数の曲がり角の一つ一つに印を付けてしばらく進んだ頃。
徐々に疲労の色が見え始めたウル達の耳に、先頭を行くヴァルザックの声が響いてきた。
.