ドラゴン・テイル【外伝】

「……クレイグ、もう少し静かに喋れ」

 今は先頭を歩くラーマが、小さなため息と共に呟いた。

「もう遅いかもしれんが……」

 その言葉に、ヴァルザック以外の全員が疑問の視線を向けた瞬間。

 …チャ……カチチャ…カチャ……

 軽い、銀貨か銅貨の縁で軽く小石を叩くような軽い音。

 それが何の音なのか、ドラゴンの二人にはすぐ察しが付いた。

 地面を歩くとき、爪が当たる音。
 もちろん、超重量のドラゴンが歩く時はこんな音ではないが、本質は同じもの。

「……何なの……? この音……」

 キスティンが小さく呟く。

 二人は、答えない。
 ただ、後方の闇を睨みつけている。

「ただならぬ気配……ってやつ?
 …ってことは、モンスターか」

 クレイグが靴を投げ捨て、腰の剣に手を伸ばす。

「……まさか…水中の、悪魔……?」

 掠れた声でレナが呟いたと同時に、後方からヴァルザックの照らす光の中にそれが姿を現した。

 無数の鱗のような皮膚が、僅かな光を捉えて反射する。

 顔立ち……というものは無く、卵のような顔に半分飛び出しているような目。口は人間でいうと耳に近い部分まで避け、鼻は無いようだ。

 カエルの水掻きのようなものが付いた手には長い槍が握られており、二足歩行をしている。

 数は暗くて分からないが、足音からして一匹ではないだろう。

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