ドラゴン・テイル【外伝】

 皮膚の質から、恐らく水辺に生息しているのだろうと想像がつく。

「……マーマンだわ……ッ! 本でしか見たこと無いけど…、多分間違いない…!」

 キスティンが動揺したように小さな声で叫ぶように言う。

「マーマン……水中のモンスター…。確か群れで生活してて、とても獰猛だって…」

 続けるレナの声も、聞こえるか聞こえないかの小ささ。

「魚みてぇな顔してるもんな」

「話が通じる顔じゃないな。こいつらが、水中の悪魔か……?」

 クレイグが剣を抜き放つと同時にウルが手の中に光を生み出す。

 ギュギョギョッ

 ギャギギュギョッッ

 それを合図にしたかのように、少しずつ近寄っていたマーマンが地を蹴り、勢いよく飛びかかって来た。

「慈悲深き水の精霊よッ!」

「勇ましき火の精霊よッ!」

 レナの声とキスティンの声が、狭い通路に響き渡る。

 その声に呼応するかのように現れた、蒼い水泡と赤い光。

 水泡はウル達の体を覆い、薄い膜のようなものを張り、光はクレイグの剣に吸い込まれるように巻き付いていく。

「おぉぉッ?! 何か剣が軽くなった……ぞっとッ!」

 刃に赤い光を秘めたクレイグの剣が、飛びかかって来た一匹のマーマンを一刀両断した。

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