ドラゴン・テイル【外伝】

「クレイグ、ここは俺達だけで十分だ。
 お前、少し休んでろ」

 鈍くなるクレイグの動きにいち早く気付いたヴァルザックが、スッとクレイグとマーマンの間に入り込んで言う。

「わりぃ…ヴァル…ッ! ハァ…ッ」

 苦しそうに息をするクレイグが、素早く後退し、ウル達のいる所へヨロヨロと歩いてきた。

「クレイグさん! 大丈夫ですか?
 すぐに傷治します」

 クレイグの体には、酷くはないが無数の擦り傷がついている。

 レナが傷口を優しく両手で覆うと、淡い水色の光が生まれた。

 その間に、キスティンが小さく呪文を唱え、解き放つ。

「来なさいッ! パムッ!」

 キスティンの声に、虚空から数個の拳程の火の玉が出現し、ゆらゆらと揺れながら小さな人の形を作っていく。

「水属性のモンスターなら、火の精は苦手なんじゃないかしら……?
 行きなさいッ!」

 発した命令に、一斉に飛び進む精霊達。
 この効果は高く、不利だったわけではないが、ヴァルザック達の立場は更に圧倒的なものとなった。

 精霊、パム達の動きも鮮やかなもので、マーマンの攻撃を軽々と避けながら、次々とその目を灼いていく。
 視力を失ったマーマン達はヴァルザックとラーマの攻撃の前に倒されていき、全てのマーマンを五分とかからずに殲滅させることが出来た。

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