ドラゴン・テイル【外伝】

 辺りが淡い光に包まれる。
 決して強い光ではないが、今まで長い間僅かな光の元で移動を続けていたウル達にとっては、目が眩むほどの光に思えた。

 微かに、水の流れる音がする。

 目を細めながら辺りを見渡すと、壁沿いに細い水の流れを見つけた。

 透き通る水は、光苔の放つ灯りを捉えてキラキラと輝いている。

「わぁ…綺麗…ッ!」

「神秘的って、こういうことをいうのね」

「この水、飲めるかな」

 レナ、キスティン、クレイグが口々に言う中、ウルは一人無言のまま、その小さな川の端に座り、俯いた。

 その様子を見たレナが、心配そうにウルの隣で腰を降ろし、顔を覗き込む。

「大丈夫ですか? 具合、悪いですか?」

 優しく問いかけるレナに、僅かに視線を上げて言った。

「さっき……モンスターが襲ってきた時、俺は何も出来なかった……。
 レナ、前に言ったよな? 記憶をなくす前の俺が、ザイルを襲ってきたモンスターと戦ったって。でも、さっきは、何も出来なかった……。
 クレイグやヴァル、ラーマ、レナ、キスティン。みんな戦ってたのに、俺は見ていることしか出来なかった」

 辛そうに、再び視線を落とすウル。

 記憶をなくす前の毅然とした雰囲気を持つウルの姿を知るレナは、今のウルが放つ言葉に涙が溢れそうで、上を見上げた。

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