ドラゴン・テイル【外伝】

「この先の通路、あの道を進んだ所に、それらしい泉を見つけたのだが…」

 対岸の通路を指さし、ラーマが言う。

 言い渋った理由がよく分かった。
 崖の端から下を見下ろしただけで、まるで闇の中に吸い込まれてしまうような錯覚が恐怖心をかき立てる。

「……これ渡るの…?
 俺、帰っていいかな…」

 クレイグが声にならない呟きを落とす。
 ウルも極めて同感だったが、口には出さずにグッと顔を上げた。

 視線の先には、対岸の通路。

 ─ここで俺が引き返したら、今までの苦労は水の泡だろ…。レナの言葉も、全てが無駄になる。

 今まで、通路という通路は全て調べながら進んできた。回り道など無い。

 ラーマに視線を向ける。
 美しく整った顔に難しい表情を浮かべていたが、ウルの視線に気付くと顔を向け、「行けそうか?」と目で問いかけてきた。

 僅かな間を開け、小さく頷くウル。

 それを見たラーマは、安定した足取りで丸太に飛び乗ると、まるで普通の道を歩くかのように軽々と渡って行った。

 対岸の通路の前で、丸太を照らすように光を掲(かか)げて振り返るラーマの後を追うように、ウルが丸太に足をかける。

「下は見るなよ。…いや、見えねぇだろうけど、視線は歩幅のニ、三歩先の丸太だ。
 ゆっくり、慎重に、な」

 ウルの背後から、ヴァルザックが静かに声をかけた。

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