ドラゴン・テイル【外伝】

「クレイグッ!!」

 ヴァルザックが、クレイグを追うように崖から飛び降りる。

 落下していく光の中、ヴァルザックの体がドラゴンへと変化していった。

 空中でクレイグを受け止めたものの、狭い空間に阻まれて翼を広げることが出来ないヴァルザックは、その巨体を利用して壁の両端に体を強く押しつけ、落下速度を緩めようとした。

 グザザガガガガガガガッッ

 激しく響き渡る巨大な音。
 その音が、落下の速度を物語る。

「クレイグッ! ヴァルーッ!」

 キスティンの悲鳴に近い声が響いたのとほぼ同時に。

 ズドオォォォォォ………ォゥゥン……ッ

 鈍い地響きと共にヴァルザックの灯していた光が消え、再びその場所は闇に支配された。

「……うそ……。
 ヴァルさんッ! クレイグさーんッ!」

 レナの声が木霊するが、その声も、無音の闇に吸い込まれるだけで返事は無い。

 全員が呆然とした表情で闇を見つめた。
 だが、光が再び灯ることはなく…。

 ギャッギャッ!

 グギョッ!

 確実に近づいてくるそれにラーマは顔を上げた。

「キスティン、渡るんだ!
 早く来いッ!」

 闇から視線を外し、後ろを振り返っていたキスティンは、座り込んだままラーマに視線を移す。

 ラーマの掲げる小さな光が、対岸で立ち上がろうとするキスティンをうっすらと照らした。

.
< 126 / 160 >

この作品をシェア

pagetop