ドラゴン・テイル【外伝】

「キスティン!」

 クーパの視線の先、通路の奥から出てきた人影に、全員が安堵の息を漏らす。

 レナの声に、出てきた影、キスティンが笑顔を作った。

「んもぅ! 遅いじゃない! 結局、全部倒しちゃったわよ、クーパがッ!」

 むーっと頬を膨らませるキスティン。

 彼女の文句に、ウルはすぐ「すまない」と謝罪した。

「で? どう? 思い出した? あったんでしょ? 記憶の泉。
 ……って、あら? クレイグ、ヴァル、いつの間にそっちに渡ったの?」

 待ちきれないとばかりに、対岸から質問を投げかけてくる。

 だが、ウルが口を開くより先に、ラーマが言った。

「キスティン、今はそれどころではない。
 この洞窟には、まだリザードマンと言うモンスターがいるようだ。出来ることならそいつに出会う前にここを出たい」

 その言葉に、キスティンの表情がパッと強ばる。

「さっきの声の奴ね。聞いたわ!
 待ってて! すぐに丸太の代わりになりそうなもの」

 ギュギャルルルァァァッ!

 言葉を遮るように再び響いてきた雄叫びに、ビクンッと身を震わせるキスティン。

 先ほどよりも、近い。

『……キスティン、乗れ』

 リザードマンの声が余韻を残す中、地の精霊クーパがキスティンに体を押しつけるようにすり寄せて言った。

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