ドラゴン・テイル【外伝】

 緩やかに伸びる上り階段を登りきると、そこはもう屋外だった。

 月明かりさえも届かない深い森の中で、風が無かったらまだ洞窟の中かと錯覚してしまうほどに暗い。

「……やっと、出られた…?」

 ウルの背後で、疲れ切ったレナが呟く。

「あぁ……ようやく、だな」

 同じように疲れた声で応えるウル。

「なぁ、この入口このままにしとくのか?
 あのリザードマンって奴、追って来ねぇかな……?」

 たった今出てきたばかりの通路を振り返り、クレイグが呟く。

「確かにそうね……。
 クーパ、これ閉じれる?」

 キスティンが言うと、クーパは視線だけを通路に向けた。

 再び地響きが辺りに木霊する。

 だが洞窟内の時と違い、どこに反響するでもなく、それは深い森の中へと吸い込まれていった。

 通路が消え、ご丁寧にもその上に雑草まで生えたのを見届けてから、ラーマが全員を見渡す。

「とりあえず、グレイクレイに戻るか。
 ここにいても仕方がない」

 ウル達が頷くのを確認してから、ラーマとヴァルザックがドラゴンへとその姿を変えていく。

 辺りに密集していた木々がドラゴンと化した二人の巨体に押されて倒れ、今まで見えなかった星空が地面を照らし出した。

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