ドラゴン・テイル【外伝】
『どんな奴なんだ?』
問いながらも、ヴァルザックは今し方別れたばかりの人間の姿を思い浮かべた。
まさかな……。
すぐに否定する。ブラックドラゴン相手に戦った人間とは思えない。
『人間の男。鳶色とでも言うか、深い茶色の髪で、少し不思議な人間だ。正直な所、生死も不明だ。心当たりは無いか?』
問うラーマを見返したまま、ヴァルザックは唖然とした。
まさか。あいつそんなに強そうには見えねぇんだけど……。
他人のそら似とか、たまたま特徴が似てるだけだとも言える。第一、ヴァルザックに人間の男女の区別は付かない。
ラーマに言おうか……。
だが、ヴァルザックは言えなかった。
人間違いなら、ラーマは無駄足だ。
さらに言えば、ブラックドラゴンと戦って生きているとは思えない。
ならば、先に北の大地を徹底的に探してからでも遅くはない。
『……いや、見かけなかったな……』
考えながらヴァルザックの出した答え。
ラーマは小さく息を吐く。
『……そうか、邪魔をした。我はもうしばらく探すことにする』
飛び去ろうとするラーマに、ヴァルザックが待ったをかける。
『なぁ、ラーマ。その人間を見つけたらどうするつもりだ? 殺すのか?』
その問いに、ラーマは視線だけをヴァルザックの方に向ける。
『まさか。送り届けるのだ。あいつを待つ者がいる……』
そう言い残すと、北に向かって去っていった。
.