ドラゴン・テイル【外伝】

 キスティンもクレイグもラーマも、何も言わなかった。

 レナの気持ちを考えると、何を言えば良いのかわからないと言った方が正しい。

 長い沈黙の中、ヴァルザックだけがこの重苦しい空気の意味を理解できず、全員の顔をキョロキョロと見回している。

「…その歌を歌ってるのは……淡い茶色の髪の女性、だよな……?」

 沈黙を破ってそう呟くウルに、ゆっくりとレナが頷く。

「…なん…で、言ってくれなかった…?」

 変わらない呟きに強い憤りを含むウルの言葉に、堅く目を瞑った。

 そんなレナを弁解するように、ラーマが重く口を開く。

「ウル、何も好きで隠していたわけではないんだ。人に聞くよりも、お前自身が思い出さねば意味がないだろう?」

 ラーマの言葉に、少し間を開けて頷いたウルは、レナの肩から静かに手を離した。

「…そう、だな……。すまない、レナ…」

 そう言って頭を下げるウルに、首を振るレナ。

「そんな……、謝らないで下さい……ッ!
 言おうと思えば言える機会はいつだってたくさん……ッ!」

「でも、俺が自然と思い出すのを待ってくれたんだろ?
 気を使ってくれたのに…、攻めるようなことを言って悪かった……」

 レナの言葉を遮って言うウルの顔はとても優しく、一層レナの心を締め付けた。

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