ドラゴン・テイル【外伝】
「私、実は孤児なんです。幼い頃の記憶が無くて…。グレイクレイの道ばたで雨に打たれて、酷い高熱を出して倒れていたらしいんです。記憶がないのも、幼い脳に高熱による障害が残ったせいだろうって、お医者様に言われて……」
暗い表情で呟くように語るレナの頭を、ラーマが優しく撫でる。
「そうだったのか…。辛かっただろう」
ラーマの言葉に、レナは首を振った。
「いえ、それが……今のウルと違って完全に記憶が欠落しているもので、全然……。
そのおかげでキスティンとも出会えましたし…。あ、でも、そのラウラさんには、是非お会いしてみたいですね。どちらにお住まいの方なのですか?」
思わぬ切り返しに、少し困った表情で視線を交わすウルとヴァルザック。
そんな二人の反応に、キョトンとした表情を向けるレナ。
「…いや、実はさ……」
言い淀むヴァルザックの代わりに、ウルが答えた。
「グレイクレイに着く前に、モンスターに襲われて……」
そこまで聞いたレナは、悲しげにスッと睫毛を伏せる。
「そうでしたか…。お二人とも、辛かった でしょう。
そんなこととは知らず、無神経に聞いてしまってすみません……」
頭を下げるレナに、ウルとヴァルザックは慌てて首を振った。
「いや、話を振ったのは俺たちだし、レナが謝ることじゃない」
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