ドラゴン・テイル【外伝】
それからしばらく、出発した時間帯が遅かったせいもあり、すぐに視界は夜の闇へと飲まれていった。
「夜の移動は避けよう。危険は少ないに越したことはない」
ラーマの提案に、一同の足が止まる。
辺りは見晴らしの良い平野。
前方に森らしき密集した木々の影が見えた。あんな森や林には、モンスターが身を潜めていることが多い。
街道沿いにポツポツと生えている一本の細い木の幹にレナが座り、「ふぅ……」と一息ついた。
ウルも隣に腰を降ろす。
「疲れたか?」
ウルの声に、レナは僅かに視線を向けて笑顔を作った。
「いえ、大丈夫です。この道は何度となく通っていますので。明日の夕方か夜には、ザイルに着きますよ」
─…ザイル……。
一瞬だけ、ウルの鼓動が高鳴る。
だが、そんなことは微塵も表情に出さずに、ウルはレナの目を見て言った。
「レナ、あの歌をもう一度歌ってくれないか?」
レナは、驚いたように目を見開いたが、すぐに瞼を下ろして小さく頷いた。
レナの口から紡ぎ出される音色を聞きながら、ウルは静かに目を伏せる。
優しく切ないその歌は、平野を吹き抜ける風に乗り、流れていった。
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