ドラゴン・テイル【外伝】
□雲の行き着く先に
たわい無い雑談をしながら、時折休憩を含めて歩き続けて行く内、空が赤みを帯び始めた。
モンスターとも遭遇することなく、森を抜けた時にはもう星がうっすらと瞬いている。
空が、赤から群青へと表情を変える頃、レナの言葉通り、前方に丘の影がはっきりと浮かんでいた。
「……あの丘の向こうが、ザイル……」
ポツリと呟いたウルの声が、レナの心に重くのし掛かる。
「あと……少しですよ。頑張りましょう」
半分以上は自分に言い聞かせるように、極力明るく言うレナを、ラーマがチラッと振り返った。
“大丈夫か?”と問いかけるようなラーマの視線に、レナは泣きそうな笑みを返す。
丘のふもとまでたどり着いた時、レナの歩調は明らかに落ちた。
「レナ、大丈夫か? 少し休憩しようか」
俯きがちに歩くレナを気遣い、ウルが声をかける。
レナは僅かに頭を振り、ウルと同じように自分に視線を向けるヴァルザックとラーマに向かって言った。
「すみません。ヴァルザックさん、ラーマさん、ちょっと先に行っててもらっても良いですか……?」
一瞬、驚いたような表情を向けた二人だが、レナの心境を察していたラーマだけは「では、ゆっくり行っている」とだけ告げて、ヴァルザックを促しながら丘へ登っていった。
残されたウルが、二人の背中を見送ったあと、レナへと視線を移す。
そのウルに、レナは静かに口を開いた。
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