ドラゴン・テイル【外伝】

「……あの日、全く同じ場所でウルさんを見つけた時、私は「きっと運命だ！」って思いました。
　でもそれは、私の願う「運命」とは違うものだったんですね」

　そっと目を伏せるレナ。
　その表情はとても大人びて、美しい。

「…私……ウルさんが好きです……」

　ポツリと漏らした言葉にウルが口を開く前に、レナが続けて言った。

「でも、ウルさんには私なんかよりもずっとずっと、ずーっとお似合いの素敵な女性が待っているんです。
　この丘の先に……」

　そう言うと、レナはウルにお辞儀をするように、深く深く頭を下げる。

「…行って……下さい。ウルさんを待つ、その人のところへ…。私は、ここから精霊を召喚して帰ります……。
　わ、私が、ご一緒出来るのは、……ここまで……です……」

　頭を上げず、告げるレナ。
　それは、ウルの顔を見ないためなのか、それとも、ウルに自分の泣き顔をみせないためなのか……──。

　ポタポタと音を立てながらレナの顔から落ちる涙が、地面に小さな染みを作っていく。

　どう言葉を返したら良いのか、ウルには分からなかった。

「………有り難う……レナ……」

　考えた末、一言だけ静かにそう残すと、ウルはレナに背を向けて歩き出す。

　後にはただ、溢れる涙を拭うことなく、いつまでもウルの背を見送るレナの姿だけが残っていた。

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