ドラゴン・テイル【外伝】

 先を行くラーマとヴァルザックに追いついたウルに、ラーマが一言だけ「もう良いのか?」と問いかける。

 ラーマには、レナがザイルまで来ないことが何となく分かっていた。
 人間との付き合いが浅いヴァルザックだけは、レナの姿を探すように時折後ろを振り返っている。

「……あぁ。レナは精霊を召喚して戻ると言っていた」

 その言葉に、ヴァルザックが怪訝な表情を浮かべ、ラーマは「やはりか」と納得したように頷いた。

「もうすぐザイルなのに。何で引き返したんだろうな、レナ」

 不思議そうに呟くヴァルザックに、ウルもラーマも答えることが出来ず沈黙する。

 ─……あれ? 俺ひょっとして言っちゃマズいこと言っちゃった……?

 重くなった空気に、キョトンとした表情で二人の顔を交互に見るヴァルザック。

 それに気付いたラーマが取り繕うように言った。

「何か大事な用事を思い出したのだろう。
 なぁ? ウル」

「……………え?
 あ、あぁ、そうだな……」

 不意に話を振られて、ハッと顔を上げたウルが曖昧なぎこちない笑みを浮かべる。

 ──……私…ウルさんが好きです──

 ──……行って……下さい……──

 レナの声が頭に響き、ウルは堅く目を閉じた。地面を濡らすレナの涙が頭から離れない。

 ─……すまない………レナ……。

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