ドラゴン・テイル【外伝】

「ここで……二人で寝転がっていたな…」

 雑草を撫でながら、小さく呟く。

「ここはいつでも俺達の遊び場で……。
 モンスターが出るって言われても、二人で行けば安全な気がして……」

 ─…そうだ……。
 ここが全ての始まりの場所だった……。

 暗くなる空から、太陽の代わりとばかりに月が地面を照らし出す。夜の闇に紛れ、ウルの影がうっすらと形を作る。

『……ウル…』

 いつのまに姿を変えたのか、白銀の体に月明かりを浴びて輝くラーマが、ウルの隣へ近づいてきた。

「……あぁ、そこで、ラーマと話したな。
 あの時はドラゴンが嫌いで、ドラゴンを讃えるあの町にすら嫌気がさしていた」

『………』

 ウルの言葉に、ラーマが無言で頷く。

「そこまで昔のことじゃ無いのにな。
 何年も前のことのように感じるよ」

 そう呟いて目を伏せるウルの髪を、風が静かに揺らした。

 月と星だけが時間を刻むようにゆっくりと動く。

 十数分……数十分だったかもしれない。
 ただ、風に吹かれて擦れる草の音に耳を傾けていたウルは、意を決したように目を開き立ち上がると、大きく深呼吸をして丘を下り始めた。

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