ドラゴン・テイル【外伝】
町の入り口に建てられている門。
町の入り口から町の中央に続く大通り。
色褪せていた記憶の影が、鮮やかに輝きだす。
─ずっと、探していた場所……。
俺のあるべき場所……か。
夢で見た朧気(おぼろげ)な景色などではない。
見慣れた町並み。当たり前のようにある人の気配。
記憶をなくしていたなど、まるで夢か嘘だったかのように迷うことなく足を進めて行き、ウルは一軒の民家の前に立った。
ずっと、探していた瞬間。
ゆっくりとドアノブに手をかけて扉を開くと、まっすぐ奥へと入って行く。
─まるで変わってないな……。
玄関から奥の部屋へ続く扉まで。
室内をグルッと見渡したウルは、苦笑を浮かべた。
物音一つしない部屋の扉の前で深く息を吐くと、静かに押し開ける。
部屋の奥で眠る、一人の女性。
何の躊躇(ためら)いもなく暗い部屋へと入り、女性の顔を覗き込む。
少女のような幼さが残るその寝顔に、自然と笑みが浮かぶ。
─久しぶり。待たせて悪かったな。
心の中で、目の前で静かな寝息を立てる女性、リムレットに呟いた。
─ただいま。そして、お帰り。
リムレット……。
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