ドラゴン・テイル【外伝】
ようやく絞り出したような声に、ウルは目を閉じた。
腕の中で震えながら泣き続けるリムレットの背中をポンポンと軽く叩く。
「リム……。
リムレットが居ない間、たくさんの土産話が出来たんだ」
目を開き、リムレットに視線を落とす。
肩を震わせながら涙で濡れた顔を上げたリムレットが、小さな笑みを作った。
「うん……楽しみだな……。
ごめん、急に泣き出しちゃって…。服、汚しちゃったね…」
ウルの服に付いた自分の涙を拭うように手で擦る。
「ウル、疲れたよね。私、もう平気。今、お風呂の用意するからね。後でゆっくりお話聞かせて?」
泣いてすっきりしたのか、明るい口調で言うと、ウルの腕から体を放し、扉の方へ歩き出した。
扉の前で一度振り返り、少し照れた表情を浮かべる。
「私が泣いたなんて、人に言わないでね」
念を押すように言うリムレットに、ウルは思わず声を出して笑いそうになった。
「言わないよ」
ウルの答えに満足したように笑顔を作ったリムレットが、扉の奥へ消える。
優しい青年の旅の終わりを、丘の頂から青と白銀のドラゴンが目を細めて見守っていた。
ここは、竜の加護を受ける町───。
Fin. (NEXT.あとがき)