ドラゴン・テイル【外伝】
翌日は、前日の晴天から打って変わり、酷い悪天候だった。
飛行する事もままならない。
洞窟の中から少しだけ顔をだす。
激しく叩きつける大粒の雨が、ヴァルザックの顔を濡らした。
絶え間なく空を走る稲光にため息を漏らした。
これでは、人間の元に行くどころか洞窟からも出られない。
諦め、奥へと引っ込んだヴァルザックの目に止まったものは、小さな袋。
大きな前足の爪に引っかけるように持ち上げるとチャリンッと小さな音がする。
─……?
袋を逆さにしてみると、中からジャラジャラと金貨が落ちてきた。
『人間の使う貨幣か……あいつ、忘れていったな……』
ドラゴンの姿では小さくて拾えず、ヴァルザックは人間の姿になる。
散らばった貨幣をじゃらじゃらと集めて袋に入れていく。
─……ってちょっと待て。
ここに金があるって事は、あいつ今文無しじゃないのか……?
相変わらず、外では激しい雷と雨。
だが、それでも構わずヴァルザックは洞窟から空へ飛び立った。
あの人間を探しに。
雨の日の飛行は嫌いだが、今日は何故か翼が軽い。
─……そうだな……。
雨に打たれながら、轟く雷の中を飛ぶヴァルザックはぽつりと思った。
─しばらくあの人間と旅をするのも、良いかもしれない。
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