ドラゴン・テイル【外伝】
男はゆっくりと体を起こした。
まだクラクラするのか、座っているにも関わらず体のバランスが安定しない。
「ちょ……! 無理しないでよ?」
慌てて男の体を支えるラウラ。
それを「大丈夫」と手で制する男。
「…それより…その青髪の男はどこにいるんだ?」
問う男に、それでも無理矢理体を横にさせようと力を入れながらラウラが言った。
「どこかに行ったわ。追いかけるなら止めないけど、どの道その体じゃ無理よ。追い付くどころか、またどこかで行き倒れるのが関の山ね」
ラウラの言葉は正論だ。
だが、それでも男は体を起こそうと腕に力を入れた。
男は、自分が誰なのか思い出せない。
思い出したくても、記憶を無くした部分だけは白いモヤの中で、全く見出せない。
忘れてはならない記憶だったはず。
それを思い出せないもどかしさ。
ヴァルザックが意味も無く自分を捜しているとも思えない。
もしかしたら、自分の記憶に関することを知ったのではないだろうか?
そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。一刻も早くヴァルザックに追い付いて、自分を捜す理由を知りたい。
自分が自分でない感覚を、男は早く取り除きたかった。
体を起こし、自分を押さえるラウラの手を逆に掴み、そのまま引き離す。
驚いた顔のラウラを覗き込むように見る男。
「そいつは、どこに向かったんだ?」
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