ドラゴン・テイル【外伝】

 目が覚めてから、もうどれくらい経っただろう……。

 痛みや空腹から、朦朧としていたが、それでも意識は手放さなかった。

 誰かが来るかもしれない。それだけを頼みに、待ち続けた。

 聞こえたのは、羽音。

 大きく力強い音に、どこか懐かしい思いがこみ上げる。

 ─…あの羽音を……俺は知っている…?

「おぉぉいッ!!」

 叫ぶ度、体に激痛が走るがそれでも声を上げ続けた。

「頼むッ! ここから出してくれッ!」

 叫び続ける。羽音は一度遠ざかるが、再び戻ってきた。

 ズウゥゥゥンッ

 近くに巨大な何かが落ちるような音と共に、地響きが響く。

 明らかに、意志のある何か。

「……ここから、出してくれ……ッ!」

 痛みで声が掠れる。それでも、必死に叫び続けた。

 不意に、光が顔に差し込み目を閉じる。

『………』

 何かが、瓦礫を取り除いたのだろう。
 陽を遮るように影が落ちる。

 現れた影は、人間ではなかった。トカゲのような顔に、鋭い牙。

 ─ドラゴン………。

 鋭い紫の瞳。体は青一色で、まるで空と一体化しているように見える。


 ドラゴンは不思議に思った。何故ここに人間がいるのだ。

 だがそれよりも驚いたのは、自分を見ても全く怯えた様子が無いこと。
 それどころか、この人間は安心したような表情を見せたのだ。

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