ドラゴン・テイル【外伝】

 特にモンスターに襲われる事無く朝を迎えたウル達は、太陽が登る前に出発した。

 ちなみに昨夜の晩ご飯はヴァルザックが作り、その調理の手際の良さと味にラウラは感嘆の声を上げていた。

 焚き火の後始末を終えて歩き出したウルとラウラに、ヴァルザックが声をかける。

「雨が降る……たぶん、午後辺りだな」

「うそッ! 何で分かるのッ?!」

 驚いた顔で言うラウラに、ヴァルザックは小さく肩を竦ませて言った。

「大気の湿度、風向き、温度と雲行きで」

「…………そ……そお………」

 全然分からないと言うように、とりあえずの相槌(あいづち)を打つラウラ。

 ─あぁ………多分、本能か。

 ウルがそう心の中で呟く。

「昼過ぎるまでに雨宿りが出来そうな場所まで行かないとな」

 そう言って少し馬を急かすウル。
 ヴァルザックもウルの馬に合わせて速度を早めた。

 今、ウルとラウラがウルの乗っていた馬に乗り、ラウラの乗っていた馬にはヴァルザックが乗っている。

 馬は、おそらくヴァルザックの正体を見抜いていたのだろう。ヴァルザックが乗ろうとすると必死で拒否をしていたが、ヴァルザックの呟いた「喰うぞ」の一言で大人しくなった。

 若干馬が可哀想な気もしたが、だからと言って馬の速度で走れとは言えない。
 ドラゴンの姿で上空から追ってくるのは以(もっ)ての外(ほか)だ。

 馬には、しばらくの間だけ我慢してもらうしか無い。

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