ドラゴン・テイル【外伝】
ドラゴンは、持ち帰った人間を珍しげに眺めていた。
自分を見て、怯えなかった人間は実に珍しい。
何者だろうか、見たところ特に武装もしていない。持っている物も少ない。
とりあえずで運んできた人間は、昏々と眠っている。
所々に傷を負っているようで、特に右腕の打撲傷が一番酷い。
起きるまでに手当てでもしてやるか…。
そう思うや、巨大なドラゴンの姿がみるみる内に小さくなり、人間の姿を形作る。
「ふぅ……この姿になるのはどれくらい振りだ……」
意外と疲れるのか、ぽつりと呟いた。
眠り続ける人間の腕に手を添える。
少し熱い。熱もった腕は痛々しく腫れ上がり変色していた。
人間に化けたドラゴンは、手近にある大きな葉を一つむしり取ると、それを真っ直ぐに広げた。
葉をそのままに、自分の拠点としている洞窟から外へ出る。
洞窟の周りをウロウロと歩き回り、見つけた目的の草を三つほど取ると、再び洞窟へ戻った。
取ってきた三つの草の内一つを両手に挟み、擦り合わせるように潰す。草は水気を帯びながら、手を緑に染めていく。
完全に草の原型を失ったそれを、眠る人間の傷口に刷り込むように撫でる。
その上から広げていた葉で覆うように包み、結んだ。
他の小さな傷にも同様の処置を施していきその作業が終わり際に差し掛かった頃、眠る人間の瞼が僅かに動いた。
.