ドラゴン・テイル【外伝】

□オークの森


 近づいて行くにつれ、それは間違いなく犬の姿を形作っていった。

「犬だな」

 馬から降り、塊を覗き込むヴァルザックがラウラの言葉を肯定する。
 だが、その犬らしき黒い塊はピクリとも動かない。

「寝てるの?」

 ラウラも馬から降りて塊に近づこうとしたが、ヴァルザックに止められた。

「何? ヴァル……」

「多分、見ない方が良いと思うぞ」

 ラウラの腕を引きウルの所へ戻るヴァルザックの表情は、険しい。

「ウル……どうも俺、嫌な予感が……」


 ゴフッ……ゴグッ……!


 ヴァルザックの言葉を遮るように、異様な音が雷鳴に混じりながら響く。

「…な……何? この音……」

 全員が辺りを見回す中、ラウラの呟きが耳に届いた。


 ゴフッ…ゴ…ッ…ゴフン…ッ!


 音は着実に近づいて来ている。

 ウル達は自然と背中合わせに円陣を組んで、死界を無くした。

 空が一層暗さを増していく。今が昼前だということを忘れてしまいそうになる程、視界は悪くなっていった。

 ゴロゴロゴロ………───

 雲の中で雷が唸り声を上げる。

 ピカッ! と激しい稲光。その中でウル達が目にしたのは、自分達を取り囲む無数の大きな影だった。

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