ドラゴン・テイル【外伝】




「……キリがねぇ」

 もう何匹倒したか分からない。

 戦う術を持たないウルを庇いながら応戦するヴァルザックとラウラ。

 序盤では優勢に思えていた戦いだが、次から次へと群がるオークの大群に、押され始めていた。

「…はぁ……はぁッ! い、一体、何匹出てくるの……?!」

 ラウラの疲労が激しい。矢も底を尽く寸前の状態だ。

 ─このままじゃ、マズいな……。

 二人が戦う間、オークからの攻撃を避けながら、ウルは辺りに視線を巡らせた。

 何もない広い平原。
 隠れられそうな場所は無い。

 ─せめて、ヴァルがドラゴンになれれば良いんだが……ッ!

 戦うことが出来ない自分の不甲斐無さが悔しい。

 ─前は、何かと戦った気がするが…。

 どう戦ったのかは覚えていない。

 ─クソッ! 思い出せ、俺ッ!

 記憶を探ろうと目を閉じた瞬間、唐突にウルはバランスを崩し、馬の上から地面へ投げ出された。

「ウルッ!」

 素早くヴァルザックが駆け寄り、引き起こす。

 見ると、馬の腹部に一匹のオークが爪を立て、引き裂いていた。

 馬がビクンッビクッと短く痙攣し、動かなくなる。

 その馬に、近くにいるオーク達が一斉に食らいついていった。

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