ドラゴン・テイル【外伝】

「今だッ! 走るぞ!」

 ヴァルザックの言葉に、弾かれたように走り出すウルとラウラ。

 オーク達の合間をすり抜けて走り去る三人には目もくれず、馬に群がるオーク達。

「振り向くなッ! 走れッ!」

 後ろの様子を見ようと、振り返ろうとしたラウラにヴァルザックの鋭い声が飛ぶ。

 必死に全力疾走をして約三十分。

 足が前に進まなくなる程疲れ果てたラウラが、地面に倒れ込んだ。

「…ッ! ハァ…ッハ…ッ! ごめ……、もうダメ……ッ!」

 仰向けに倒れたままで、ラウラが苦しそうに言う。

 ウルもラウラの横に座り込み、苦しそうに肩で息をする。

「ここまで来れば大丈夫か。
 少し休もう……」

 ヴァルザックだけが全(まった)く平気な顔で辺りの様子を窺っていた。

 ─…さすがはドラゴン…人間とは基本的な体力の許容量(キャパシティ)が違う…。

 ぼーっとそんな事を考えつつ目でヴァルザックの行動を追っていると、彼の視線が街道の前方を向いて止まる。

「森があるな……。ウル、ラウラ、少し歩けるか? もうそろそろ雨が降る頃だ。森の木で雨宿りをしよう」

 ヴァルザックの言葉に、街道の先に目を向ける。確かに、街道はさほど遠くない所で鬱蒼と生い茂る森の中に延びていた。

「オッケー。
 じゃ、早いとこ森に入っちゃおう」

 フラフラと立ち上がるラウラに、ヴァルザックが手を貸しながら森へと歩く。

 遠くから、雨の音が響いてきた…──。

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