ドラゴン・テイル【外伝】

「いや? 街にある機械が盗難にあわない様に警備兵だけは残ってるらしいが……」

 うろ覚えだから確信は無いぞ?

 そう告げるヴァルザックに、ウルは小さく頷いた。

「無人じゃないなら良いさ。馬くらい居るだろ」

 そう言った瞬間、ヴァルザックの表情がパッと険しくなり「しッ!」と全員を黙らせるように、自分の口元に人差し指を押し当てた。

 ウルもラウラも、「何?」と言うような顔で口を閉じ、ヴァルザックを見つめる。

 ヴァルザックは、辺りに視線を配りながら、小声でウル達に問いかけた。

「……今、何か聞こえなかったか…?」

 ウルとラウラの視線が重なる。

 耳を澄ましてみるが、聞こえてくるのは雨が木の葉を打つ音だけ。

 視線を巡らせても、ただ街道が続き、その両側に木々が生い茂っているだけで、他には何もない。勿論、街道にも何もない。

 再び視線を合わせたウルとラウラは、お互いに首を振った。

 だが、ヴァルザックだけは変わらずに鋭い視線を辺りに飛ばしている。

 わけが分からず、痺れを切らしたラウラがヴァルザックに声をかけた。

「ヴァル、何なの? 驚かさないでよ」

 ヴァルザックは、ラウラの声に答えず、小さく呟いた。

「───来るぞ」

 何が? と聞き返そうと口を開いたラウラだが、その言葉は出て来ない。

 気付いたのだ。ヴァルザックだけに聞こえた「音」が。

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