ドラゴン・テイル【外伝】

「目、覚めたか?」

 朦朧としているのか、焦点の合わない人間の目の前に自分の顔を持って行き問う。

「………あぁ…」

 返ってきた声は掠れていて、本当に目を覚ましているのかわからない。

「あんたが助けてくれたのか……?
 ドラゴンを見た気がしたんだが……」

 言う人間に「俺がそうだ」と答える。

 人間は、一瞬驚いた顔で見返してきた。
 鳶色の瞳に移る自分の姿は、ドラゴンでらなく。

 だが、人間はあっさりと信じた。

「…そうか、世話になった……。手当てもしてくれたんだろ? 有り難う」

 その言葉に、人間に化けたドラゴンが瞠目した。

「変な人間だな。疑わないのか?」

 驚いたまま尋ねるドラゴンに、人間は小さく笑った。

「驚いたよ。でも、何でかな。全く怖さは感じない。お前の威厳が足りないんじゃないのか?」

 その言葉に、ドラゴンは思わず笑い出した。変な人間だが、どこか憎めない。

「かもな。
 俺はヴァルザック。お前の名は?」

 ドラゴン、ヴァルザックの問いに、人間の動きが止まる。

 ─……俺の名………俺の名は………?

 驚いたように目を開く人間を、不思議そうに見返すヴァルザック。

「……俺の名前……思い…出せない……」

 辛うじて絞り出した声には、明らかに動揺の色が混じっている。

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