ドラゴン・テイル【外伝】
ヴァルザックが飛び進むにつれて、徐々に空気が濁り始めた。
「何これ……霧…? …じゃないわね…。
砂埃…?」
急激に悪化する視界に、不安な顔をするラウラ。
『砂埃じゃない……煙だな…』
急に、目に痛みが走り始めた。開けていられない。
まるでいきなり酸素が途切れたように呼吸も苦しくなる。
「…ッ! ヴァルッ! 上昇してくれ!
雲の、上に……ッ!」
『了解』
苦しそうなウルの声に、ヴァルザックはすぐさま雲の中へ飛び込んだ。
厚い雲を一瞬で突き抜け、雲の上へと飛び出す。
「ふはぁ…ッ! あぁ、苦しかった!」
肺に溜めた空気を吐き出し、新しい空気を深く吸い込むラウラ。
「何だったの?
今のけむ…ッコホッ! 煙は! ヒドイ臭いだったわ……」
少し煙が喉に当たったのか、息を吸い込んだ際にケホケホと咳込みながら呟く。
『あれが、空気を汚染している機械の排出物だ。だが、あそこまで酷くなってるとは思わなかったな……』
「あの中の飛行は厳しいな…。
こんな環境で、まだ街に人が居るとは思えないんだが……」
眼下に広がる雲の海、その更に先を見下ろしながら言うウル。
「そうね……もうあの中に戻るのはゴメンだわ……」
顔をしかめながら、ため息混じりにラウラが呟いた。
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