ドラゴン・テイル【外伝】
「あぁ、俺の知り合いが居るらしいんだ。ひょっとしたら、記憶を取り戻すキッカケがあるかもしれないだろ?
どうせ通り道なんだし」
ふむ……。
小さく呟き、記憶の中の空路を辿(たど)るヴァルザック。
『確かにこの方向から行けばグレイクレイはザイルの手前にある。でも、何故それが分かったんだ?
思い出したのか?』
そう言われ、ウルは「思い出したわけではないんだが…」と首を傾(かし)げた。
自覚は無いが、無意識に土地勘を思い出したのだろうか。
『まぁ良いさ。何はともあれ、記憶を取り戻す情報は多いに越したことはない』
うんうんと頷くヴァルザック。
グレイクレイに行けば、全てではなくとも記憶に繋がる何かがある。
確信ではない。ウルにはそんな「予感」がするのだ。「曖昧」より、もっと確信に近い予感。
確かめずにはいられない。
それが、一番の理由。
─グレイクレイで、俺は記憶を取り戻せるのだろうか……。
無くした記憶は、一体どんな物なのだろうか……。
思い出したいと強く思う反面、不安に思う自分がいる。
ウルは、小さなため息を落とした。
そんなウルの心の葛藤を見透かしたかのように、ヴァルザックが笑い声を上げる。
『そんな深刻そうな顔をするな。
記憶が戻ったら世界が終わるわけじゃあるまいし。自分の記憶だろ?
何を躊躇(ためら)う必要がある?』
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