ドラゴン・テイル【外伝】

 大地は、深い闇色に覆われていた。

 その中の一カ所だけ、申し訳ない程度の火で焚き火が作られている。

 その焚き火の脇に、ラウラが一人立っていた。

 辺りに広がるのは、色の付いた液体。それはまるで水たまりのように、小さい池のように、所々に点在している。

 そして、その中央に横たわるのは、人間だった物。

 ラウラは、中身の無い人形のように、身動き一つせず、揺れる小さな炎を見つめていた。

 ……ッズゥ……ン…ッ

 ラウラの背後に降り立つ、巨大なブルードラゴン。ゆっくりとラウラが視線をズラし、後ろを振り返る。

 ヴァルザックの姿を見ても、表情一つ変わることの無いラウラの瞳は、燃えるような赤色に染まっていた。

『……ラウラ……』

 静かに声を掛けるヴァルザックには答えず、ダガーを持つ手に力を入れる。

 それを目の端で捕らえたヴァルザックは短く瞑目し、次に目を開いた時は敵を見るそれになっていた。

『……もう、声も届かなのか。
 こんなに手を汚してしまっては、たとえ自我が戻っても辛いだろうな。
 ……俺が、終わりにしてやるよ』

 ダガーを構え、素早い動きで一気に距離を詰めるラウラ。

 ヴァルザックは、ラウラに向かって怒号を上げた。
 その声に反応するように、ヴァルザックの影が大きく揺れ、その中から無数の弾丸のような物が生まれ、ラウラに向かって突き進む。

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