ドラゴン・テイル【外伝】

 ヒュッと短く息を吹き、飛び進む弾丸が当たる直前に体を捻る。

 自分が進む速度と弾丸の迫り来る速度を計算し、難なく避けるラウラ。

 ヴァルザックの目の前まで迫ると、下から切りつけるようにダガーを振り上げる。

 ラウラの予想もしない身体能力に驚きつつも、その一撃を後ろに飛んで何とかかわすヴァルザック。

 それを逃がさず、ラウラが再び一歩踏み込んで追撃をかける。

 ギィィ……ン……

 ラウラの放った二度目の攻撃が、ヴァルザックの皮膚に当たり弾かれた。

『そんな力でドラゴンの皮膚に傷が付くと思うか?』

 ヴァルザックがそう口にした瞬間、影の鎖がラウラの体に絡み付く。

 表情を変えず、鎖を断ち切ろうともがくラウラだが、鎖はまるで染み込むようにラウラの体の中へと消えていった。

『ラウラ、もう眠れ』

「………」

 唸るように低く呟いたヴァルザックの声がラウラの耳に響いたと同時に、ラウラの動きがピタッと止まる。

 ラウラの体に入り込んだヴァルザックの魔力の鎖が、ラウラの体の機能そのものを支配していった。

 痛みも苦しみも、何の感覚も味わう事無く、ラウラの体から力が抜け地面に崩れ落ちていく。ラウラの瞳は、先ほどの燃えるような赤色から元の黒色へと変わり、ゆっくりと閉じた。

「……」

 呼吸が止まる直前、僅かな動くラウラの唇と流れ落ちた一筋の涙を、ヴァルザックは見逃さなかった。

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