ドラゴン・テイル【外伝】
沈黙が落ちて、どれくらいの時間が経っただろう。
ウルもヴァルザックも、何も言わず、ピクリとも動かず、ただ時間だけが流れていく。
自分の知る人物が目の前で静かに目を閉じている現実を受け入れられないウルを気遣って、沈黙を破ったのはヴァルザックだった。
『…ウル、ラウラは最後に喋ったんだ。一言だけ、「ごめん」……そう言っていた』
ヴァルザックの声が胸に響く。
気が付くと、自分でも知らない内に肩が震え、涙が零れていた。
「…………そ……か……。最後に、自我を取り戻したんだな……」
涙を見せないように、深く頭を下げたまま呟くウルの声は、今にも消えてしまいそうな程小さくて。
再び、沈黙が落ちた。
ヴァルザックはゆっくり二人に背を向けると、その場を立ち去る。人間の感情はよく分からないが、今、自分は居るべきでは無い。
何となくそう察したヴァルザックが、少しの間二人にしてやろうと気を利かせた。
後に残されたウルとラウラ。
ただただ、長い沈黙だけが落ちた。
─……何で、ラウラがこんな目に合わなきゃいけなかったんだろうな……。
その思いだけが、ウルの頭をグルグルと駆け回る。
「……ごめ…な……ラウラ……」
ウルの言葉は、もう届かない。
それでも、ウルはラウラに謝り続けた。
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