ドラゴン・テイル【外伝】

「俺も、一緒に行けばよかった……」

 一緒に行ったからと言って、ラウラを助けられる保証は何一つないけれど。

「俺が、こんな傷さえ負わなければ……」

 後悔は後を絶たない。

 止まらない涙だけが、ウルの心に影を落として広がっていく。

 ガザ……ガササササ……。

 近くで、茂みが鳴った。
 一箇所ではない、複数の場所で。

 力なく首を動かし、音のした方へ顔を向けるウル。

 目に映ったのは、揺れる茂みの合間から覗く赤い光と、白い体。

「……フェニー…バード……」

 その数は十数匹。
 茂みに隠れている数を含めると二十匹はいるかもしれない。

 どこを見ているのか分からない赤い目をクルクルと動かしながら、茂みから一匹だけピョコンと出てきた。

 トテトテと歩くその姿は、とても愛くるしい物だったが、それを見たウルの頭の中で何かが弾ける感覚が伝わった。

 ………こいつらが、結果ラウラを死に追いやったんだ……。

 まるで、何かに取り憑かれたように、ゆらっとその場に立ち上がるウル。

「………お前ら……」

 無意識に、ウルの口から声が漏れた。

 握りしめた拳(こぶし)が熱くなる。

「……許さんぞ…」

 呟いた刹那、ウルの影が揺れ、足下から螺旋に回るように駆け上った。

 その影に合わせ両腕を高く掲げるウル。

 手のひらでぶつかり合う影は、瞬時にその姿を黒い炎へと変えた。

.
< 67 / 160 >

この作品をシェア

pagetop